理事長挨拶

学会設立趣意書

日本口腔医療安全学会の理事長 高橋常男(神奈川歯科大学 教授)

日本人の主要な死因は、がん、心疾患、肺炎、そして脳血管疾患の順となっている。しかし、死亡状況は医学の進歩と保健衛生の改善、そして近年においてインフルエンザなどの大きな流行がなかったことなどが要因で、日本はいまや世界一の長寿大国となっています。また、日本の人口は今がピークで、徐々に減少が始まっており、2020年には65歳以上の人が国民の25%、すなわち4人に一人が65歳以上という試算があります。そして出生率の低下から多死社会が訪れるとも予測されております。

我が国の医療はますます進歩することは確実です。したがって、男女とも寿命はまだ延びる可能性があります。 すなわち、大衆要介護超高齢社会を迎える中で、日本口腔医療安全学会 JSOMS は歯学と医学の医療連携をますます重要視する方向性を明確とし、 個人においては歯や口腔の健康状態が加齢に伴う全身臓器の生理学的変化とほどよく協調している、またひととして正しい直立の姿勢と歩行が維持されている、 そのような生活が実現されているとき、真の健康長寿と考えております。

このような流れにおいて、いのちの元となる食べ物を口腔から取り入れ(摂食)、 咀嚼・嚥下、そして呼吸機能、自律神経機能などとの相関と、その不調和からもたらされる病態についても、 歯科医療的視点に立ってそれらの解決法に取り組める高度の専門医科学知識が重要と考えております。
一方、日常の臨床現場では、器具機材の氾濫から”ヒヤリ”としたり”ハッ“としたりする出来事は少なくないと思います。いわゆるインシデント(偶発事象、ニアミス)から、すでに患者に障害、損害が発生しているアクシデント(医療事故)まで自らが体験する可能性もさらに増加すると考えられます。

以上のことから、我々は、いのちが絶える最後の瞬間まで食する意欲を喪失させない医療体制づくりとそのための医科学知識の習得と、 起こってしまったインシデントやアクシデント(クライシス)を冷静沈着に対処できる広い知識・技術の習得の場を提供することが、JSOMS の役割と位置づけております。
リスク対策とは、さらに一歩踏み込んで、クライシス対策を前面に考えております。クライシスとは一つはトリートメントクライシスとして、 もう一つはひとの心理の絡むヒューマンクライシスとして大別しておりますが、 どのクライシスにも、医師、医療スタッフが一丸となって処する良質の医院づくりのための情報提供を第一義として考えております。

平成26年11月1日
日本口腔医療安全学会

理事長 高橋常男

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